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株式の所得とFXの所得とを、国が損益通算させたくない理由

本日は、投資の税金に関する、少々深いお話となります。

株式売買での損失と利益は、株式売買の中では損益通算することができます。
FX・指数先物・オプションなどデリバティブ商品売買の場合も、それ同士の間であれば、損失と利益は損益通算することができます。(以下では分かりやすくFXの場合のみで話を進めます)
この2つは、投資をしている方なら常識ですし、お金のアドバイザーも知っておくべき基礎知識ですね!

ところで、株式とFXとの間での損益通算は、認められていません。
例えば株式で10万円の利益があり、FXで10万円の損失があった場合に、投資の利益を差引0にすることはできないのです。
この両者は、利益に対して20.315%が課税される点は共通している上に、投資という観点では同じものだから、互いに損益通算できるようにしてほしいと、投資家の方々は思っています。

でも国は、これに対して慎重姿勢です。
なぜならこれを実現してしまうと、投資で簡単に節税できてしまうからです。

 
そのカラクリですが、FXなどデリバティブは「両建て」といって、同一価格・同一商品を同時に「売る」と「買う」を行うことができます。これにより、同額の含み益と含み損を、簡単に作り出すことができます。
しかもレバレッジがかかっていれば、少ない元手で、大きな額の含み益と含み損を作れます。ここがミソです。

例えばある年に、株で100万円の利益が出たとします。
普通に考えればこの約20%の税を払うことになります。
しかしあらかじめFXで、100万円の含み益と100万円の含み損を作っておけば、「100万円の含み損」のみ損を確定させ、株の利益と損益通算することができます。
これにより、投資の税額を0にできます。

詳しい方はお気づきだと思いますが、この方法でその年の税額を0にしても、作り出した100万円の含み益が残っています。
結局これは翌年に持ち越されるので、税額(所得額)を根本的になくすことはできませんが、翌年に納税を先送りする「課税の繰延べ」効果があります。

そして翌年にさらに高額な利益が出たとしても、FXによる含み損の作成を繰り返せば、延々と納税を翌年に持ち越し続けられます。もちろん、希望する額だけ納税するよう調整もできます。
このようにデリバティブとの損益通算の仕組みをうまく使うと、投資の利益を自由にコントロールできてしまうわけです。

 
さて、話を戻しますと、このようなことができてしまうことを国は問題視しており、株式とFXの損益通算に対しては慎重姿勢なのです。
問題の本質は、納税者自身が、納税する金額とタイミングを自由にコントロールできてしまうところにあります。
これは、法人保険を使って利益を自由に調整できてしまうのと似た理屈です。

税の公共性を考えると、国民が納税額をコントロールするのは望ましくないです。各国民が1年間で得た利益に対して公平に課税することが、望ましいと考えられているので、慎重姿勢につながっているわけです。

 
株式とFXの損益通算は、税制改正の時期にいつも話題になります。
改正が実現するまで、話題になり続けるでしょう。私個人的には、この両者の損益通算を認めないことが社会全体の利益になると考えています。

理由1:この損益通算を認めると、様々な調整事項を設けなくてはならず、制度が複雑になりすぎます。その運用にかかる人やシステムが必要になり、大きな視点で見れば国家的に生産性を下げるから。

理由2:株とFXのどちらかで損失が出るなら、その投資家は損失が出ている方の投資をやめたほうがライフプランの改善につながるから。
3年間の繰り越し控除は株式でもFX側でもあるので、その範囲で利益が出れば損にはなりませんし。

 
以上が、国が両者の損益通算を認めたくない理由の説明でした。
今後の税制改正で何か動きがあるかもしれませんが、これについて私も注目していきたいと思います。
 

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